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Q: 昨年に続いて2回目のExhibitionですが、今回は何か変化があるのでしょうか?

A: 変化はないですね、自分たちは変化し続けてるというのが常態なのです。ただ、先回の作品”Cloud”の音について、YouTubeから「著作権侵害の申し立て」という不意打ちをくらいました。それは収益化できないということだけのことだったのですが、改めて動画の音について考えさせられ、今回の作品にも影響しています。

Q:今回の作品にどうういうふうに影響しているのでしょうか?

A:今回の作品は、テキストと音と色(光)をリンクさせています。例えば、「あ」は「ドー赤」「い」は「レ#ー青」というようにリンクされています。テキストの進行にしたがって、音と色が展開するのです。テキストには、この仕組を説明している文章、映画のワンシーンのセリフ、 思想書の引用、自分の書いたメモ、を使いました。それらには何の関連もありません。
私達は動画をむしろ絵画として取り組んでいます。絵画を作るというと、通常、イメージを色、形、構図、素材、等を制御すること、つまり「描く」わけです。私達は「描く」ことを私達から切離してテキストにさせたのです。しかし、テキストは隠されているので見る人とは意味で繋がれません。というより それを意図しています。反面、私達も音と色(光)を制御できないので、出来上がった作品は見る人と同様作品に繋がっていない・・作品は私達(あなたも含めて)の「外」に出来上がるのです。つまり、「私達のもの」ではないのです。
これは多分妄想ですね。(笑)
今回の作品も前回お話したようにアイディアにすぎません。しかし、YouTubeからの申し立てが刺激になったこと、それがこのアイディアを生んだ原因の一つだったことには大きな意味があります。この片田舎で作られた数十秒の動画の音でさえ巨大なネットワークのどこかに繋がっているという刺激です。これが中国のような監視システムに利用されたらと思うとゾッとしますが。

Q: ちょっと難しいですね。BuiperWare の作品ではないと?

A: 昔、地球の周りを太陽が回っていましたが自然科学によって否定されました。でも相変わらず個人の周りを世界が回っていたのです。人間中心主義、ヒューマニズムとして。しかし現代では個人も世界という運動の中で移動し続け、変化、変質し続けているのではないでしょうか。個人の思想や表現が不要になったということではなく、それらが一瞬のうちに相対化されたり、不意打ちをくらうことと向き合うことがこの時代の現代性だと思います。ですから作品はBuiperWareの作品ではあるにしても、私達が意図していない音、意図しない色になるのです。

Q:デジタル化ということについてはどう考えていますか? NFT とか、昨年くらいから話題になっていますが。

A:これはもう、複雑で専門的な技術が多いので正直よく理解できていません。とはいえ、私達の作品は(公開することも含めて)コンピューターですべて制作していますからデジタルな世界ですね。動画を作ろうとすれば避けて通れません。アイディアとデジタル、ソフトウェアとのやりとり、サーバー、ネットとの連携、すべての過程が作品化と関係してきます。私達にとってはその全体がデジタル化ということなんです。誤解されてはいけませんが、私達はそれにリアリティがある、楽しいから取り組んでいます。作品がトークン化されるような時代ですが、紙に描いた絵をデジタル化してNFTにするのは単に市場を替えるだけで面白くないですね。どうやって売るかという問題じゃなくて、作品がデジタル化していくことにリアリティがあるんです。仮想通貨が成立したあたりからの変化はすごいですから、妄想もどんどん膨らみますよね (笑)

Q: ありがとうございました。これからも良い作品を期待しています。